このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2004年02月掲載
42.乳がん(1) 肥満とアルコール
 今、女性が最もかかりやすいがん、「乳がん」。この40年で2倍に増えています。その危険因子と生活習慣との関わりについて、東北大学医学部の坪野吉孝助教授に聞きました。
乳がんのリスクを増やすものは何ですか
 「初潮年齢が早い、初産年齢が遅い、出産数が少ない、閉経年齢が遅いなどの月経と出産に関係する因子が、明らかな原因になっています。また、家族の病歴や遺伝子の変異、成人前の急速な成長の指標となる高身長も危険因子です。ただ残念ながら、これらは自分が意識して変えられるものではありませんね」
では、生活習慣ではどうでしょうか
 「肥満が閉経後の乳がんの危険因子になっています。よく脂肪のとり過ぎがリスクを増やすといわれていますが、あまりはっきりしないと考えられています。それよりも、脂肪、炭水化物、タンパク質を含めたエネルギーの過剰摂取と運動不足から起こる肥満が問題なのです。しかも肥満度が高くなるにつれ、乳がん発生率も上がり、肥満といわれるBMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=25以上の人は、20未満の人の約2倍になります。そのうえ、乳がんばかりか、全がん死亡率も高くなることがわかっています」
子供のころからの注意が必要のようですね
 「子供のエネルギーの過剰摂取は、初潮年齢を早めたり、高身長といった危険因子に影響を及ぼします。また、若い頃からの動物性脂肪のとり過ぎは、乳がんリスクを上げる可能性がまだ残っているうえ、成人後の肥満を招くので、気をつけてください」
日ほかにリスクを増やすものはありますか
 「あまり知られていませんが、アルコールです。しかも日本酒なら1日半合、ワインなら1杯(約100ml)、ビールでも1杯(約250ml)といった少量の飲酒でも、飲まない場合と比べると、リスクが10%ほど高くなるのです。しかも、アルコール飲料の種類にかかわらず、1日の飲酒量が多くなるほどリスクが高くなることもわかっています。そのほか、深夜勤務などで夜中に照明を浴びることが多い人たちに、乳がんの発生率が高いという報告もあります。乳がんの危険因子を持っていて発生が気になるという人は、アルコールを控え、エネルギーの過剰摂取に気をつけて、肥満を避けるように心がけてください」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて