一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
トピックス&オピニオン―新型コロナウイルス関連

ステイホーム中の栄養と睡眠、そして運動

蒲池 桂子
女子栄養大学 教授
日本生活習慣病予防協会 参事

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のための緊急事態宣言に伴い現在、日本中が外出自粛(ステイホーム)を続けています。だれもがかつて経験したことがない状況にあり、多くの人の生活習慣がガラッと変わり、みなが少なからずさまざまなストレスを感じていらっしゃることでしょう。

 生活習慣の変化は、これまでと同じ食事や運動を続けられなくなり、体調不良を来しやすくなるかもしれません。そのことがさらにメンタルヘルス面への影響を大きくしてしまうことも考えられます。

 かといって、この時期、感染リスクを考慮すると、軽い病状ならなるべく医療機関の受診を控えようとすることも妥当な判断と言えます。そこで、頻度の高い一般的な症状に対し、ご自身でできる対策をいくつか紹介いたします。

便秘や下痢の対策

 急に食事の習慣が変わったことで、胃腸の調子がおかしくなり、便秘がちになっていたり、あるいは反対に下痢をしがちになっている方もいるのではないでしょうか。

 便秘には、乳酸菌の含まれるヨーグルトや漬け物、納豆菌の含まれる納豆、さらに消化酵素の含まれる長芋のとろろ掛けや大根おろしなどで、胃腸の働きを助けてあげましょう。

 一方、冷えや疲れ、ストレスなどが原因と考えられる機能性の下痢の場合は、梅干し、しょうが、リンゴなどの水分を保持してくれる働きのある食品や、温かくて消化の良い食べ物を食べるようにしましょう。

 なお、何かの病気によって下痢になる場合、その原因として冬季はかぜなどのウイルス性感染症による下痢が多く、これから夏に向かっていくと、徐々に細菌による食中毒による下痢が増えてきます。調理の際に、生肉や生魚をほかの食材と分けて扱い、消費期限に注意するなどの注意を忘れずに。

 もちろん、調理の前にはしっかり手を洗いましょう。こまめに手を洗うことは、COVID-19感染リスクを抑えるためにも大切なことです。

胃もたれの対策

 胃腸炎は、冷えから来ることが多いので、まずは消化のよい温かい食べ物、具体的にはスープやうどん、ふろふき大根などがおすすめです。さらに、キャベツ、パセリ、牛乳には、キャベジンというビタミン様物質「ビタミンU」が含まれていて、タンパク質の合成を助けて、潰瘍を修復する働きがあるとされています。

 また、牛乳はこの時期、6月までが生産量のピーク。それにもかかわらず学校給食がなくなり外食産業での消費が落ち込み、大量に処分しなければならなくなることが危惧されています。これに対して、農林水産省は「毎日牛乳をもう(モ〜)1杯。育ち盛りは、もう(モ〜)1パック」と、一般消費者の積極的な利用を呼び掛けています。みなさんも、この機会に牛乳を少し多めに飲んでみてはいかがでしょうか。

日本の牛乳を救う「プラスワンプロジェクト」緊急スタート!(農林水産省)

 そのほか、寝るときには、バスタオルを一枚おなかに巻くと腹巻き効果があり内臓が暖まります。

口内炎の対策

 口内炎ができてしまったら、まずは、ビタミン不足、疲れ、免疫力低下を考えましょう。

 口の中の炎症を抑えるのには、抗酸化作用の強い果物に含まれているポリフェノールがおすすめです。酸っぱいので敬遠しがちなミカンやキンカンなどの柑橘類には、ポリフェノールの効果による炎症を抑える働きと、βクリプトキサンチンなどのカロチノイドによる血行をよくする働きを期待できます。

 また、きなこ、豆、もやし、牛乳、豚肉には、ビタミンB2が含まれていて皮膚の修復に役立ちます。

 さらに、粘膜組織を作るタンパク質であるコラーゲンの合成にはビタミンCが必要です。口内炎、歯茎の出血以外にも、爪の付け根のささくれ対策にも効果が期待されます。ビタミンCの多い食品として柑橘類やイチゴなどがありますが、それらの甘い食品の糖分が気になる場合は、ピーマン、キャベツ、ジャガイモなどにもビタミンCは比較的多く含まれています。

質の良い睡眠を

 ステイホーム中の食事のアドバイスに続き、睡眠についてもお話しいたします。

 実は、食事と睡眠は意外に関係が深いのです。規則正しい生活を送るためにも、質の良い睡眠によって、体の代謝のリズムを保つことが重要です。

 そのために、まず基本的なこととして、生活の時間をなるべく一定にして、リズムを崩さないことが良いと言われます。また、寝る前には手や足、肩が冷えないようにして、血行が良い状態にすることも大切です。

食事で良い睡眠をサポートする

 次に、質の良い睡眠のための食事という観点で、いくつかアドバイスを。

 寝る直前に消化の悪いものを食べ過ぎると、おなかがごろごろして胸焼けなどが起き、寝つきにくくなります。また、糖質の多いものでは、血糖値が上がって睡眠の深さに影響してしまうかもしれません。便秘を解消することも、良い睡眠には大切です。

 睡眠との関連でよく話題になるのは、興奮作用の強いカフェインについてです。実は緑茶もかなりカフェインを含んでいます。夜、寝付けないのは夕食の際の緑茶が原因ということもあるかもしれません。眠りにつく数時間前からは、コーヒーや緑茶などを飲むのを控えた方が良いでしょう。

 また、眠る前の飲酒、いわゆる「寝酒」は、癖になって徐々に眠るために飲む量が増えてしまいますし、睡眠中の眠りが浅くなり、利尿作用も加わるために目覚めやすくなります。とくに女性では、こういった寝酒や体を温めるためと称して飲むワインなどの習慣がアルコール中毒につながることがあるので、「寝るために」という理由でアルコール飲料を飲むのは危険です。

 一方、食べると寝付きやすくなる食べ物とは、血行が良くなり体が温まる食事、便秘にならない食事、刺激が強すぎない食事、そしてアミノ酸のバランスがとれている食事などです。

 血行の良くなる食材としては、春菊や菊花、ねぎ類がおすすめです。料理法は、おかゆや煮込みうどん、じっくり煮込んだスープなど。

 便秘解消には、山芋や寒天など、ねばねばした多糖類といわれるものや、少量の豆類、ヨーグルト、ゼラチンで固めたゼリーなど、善玉の腸内細菌を増やすような食物繊維をとることが効果的です。

 刺激の強すぎない食事という注意事項には、塩分量が多い食べ物を食べ過ぎないという意味も含んでいます。ご存知のように、塩分量が多い食事は血圧が上がりやすく、むくみも出やすくなります。意外に思われるかもしれませんが、寿司も塩分量が多いので、食べ過ぎに気をつけてください。

 アミノ酸バランスが良い食材としては、帆立貝や牡蠣、あわびなどが良いと言われます。そのほか、アミノ酸の中でも、睡眠にかかわるセロトニンという神経伝達物質やメラトニンというホルモンの分泌に関係する「トリプトファン」が多い食べものとして、豆腐、乳製品がおすすめです。

“コロナうつ”にならないために

 最後に「うつ」について、少しお話しします。

 外出自粛が続き外に出られないために、大人も子どもも気分が滅入りがちになっている方が少なくないようです。すでに“コロナうつ”という新語も社会に定着しつつあるようです。

 うつは心の病気ではありますが、栄養との関係性が最近指摘されるようになってきました。例えば、微量栄養素であるミネラルやビタミン類など、野菜や豆類に多く含まれている栄養素の不足による代謝バランスの欠如との関連です。

 そこで登場するのが、旬の野菜や豆、そして魚などです。

 5月の旬は、「目に青葉、山ホトトギス、初鰹」といった江戸時代の俳句にもみられるように、美しい新緑、冴え渡るホトトギスの鳴き声、そして鰹。春の鰹は、黒潮に乗ってきます。脂肪の少ない赤身が美味です。

   鰹は、一生泳いで過ごす、疲れを知らない魚と言われます。鰹の赤身には、疲れを解消するとされるアンセリンというペプチドが含まれています。また補酵素として代謝を助けるビタミンB群は、神経由来の疲れをとるように働くため、安眠にもつながります。さらに鰹を食べる時にはショウガやニンニクを薬味にしますが、調理したにんにくには、ビタミンB1の効果を持続させるアリシンが含まれているので、食べ合わせの効果も上がります。加えて、鰹の血合いには、鉄やマグネシウムが含まれていて、それらは貧血予防や血圧の安定にも重要な栄養素です。

 実は、もともと「旬の食材」と呼ばれるものには、その季節に不足しがちな栄養素を多く含んでいることが多いものなのです。

 鰹のほかにも、いまの季節は、小松菜、ブロッコリー、ねぎ、新タマネギなど、疲れをとり動脈硬化を予防する抗酸化作用効果の高い野菜が、たくさん出回っています。アサリや鰆、鯛などの旬の魚介類には、旨味の成分であるアミノ酸がたくさん詰まっており、「おいしい」と感じることで、脳内物質の調節にも役立ち不眠対策にもなると言われます。

ソーシャルディスタンスを確保して、運動を継続

 一方、一定のリズムを繰り返す運動も、うつ対策に良いとされています。

 そこで、ウォーキングやリズムを聴きながら体を動かすダンスやエクササイズをしてみましょう。飽きずにウォーキングを続けるコツは、歩く道すがら新しいものを発見して歩くこと。ただし、今この時期は、もちろん、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保することが前提です。

 しかし屋外ではなく、家の中でも例えばテレビを見ながら、その場で足踏みをすることも、十分運動になります。

 食事と運動と睡眠の3点は互いに影響を及ぼしあって健康の維持・向上に働きます。逆に言えば、どれか一つ良くない習慣があると、他の二つに良くない影響を及ぼしかねません。

 ステイホームの状態がいつまで続くのかはわかりませんが、必ず終わることは確かですので、その日まで良い生活習慣を保ち、健康でいたいものですね。

2020年04月 公開

トピックス&オピニオン 関連記事

全国生活習慣病予防月間
大正製薬 コバラサポート
尿酸値PR
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート