一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
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トピックス&オピニオン―新型コロナウイルス関連

ウイルス感染に対抗する歯科の重要性 ー「インフルエンザ予防と歯周病菌との関係」より考えられること

小林 隆太郎
日本歯科医学会連合 新型コロナウイルス感染症対策チーム
日本生活習慣病予防協会 参事

 2020年に入り突然、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中で猛威を奮い、3月11日にWHOがパンデミック(世界的流行)を表明、欧米諸国が非常事態宣言を発令するに至りました。わが国でも感染拡大が起こり、4月7日には緊急事態宣言が発出され、経済活動、生活行動などの制限などのもと、これまでに経験したことのない事態となってしまいました。

 緊急事態宣言に伴い、歯科診療においても、これまで行われてきた「院内感染防止策」に加え「3つの密」への対応を、地域の実情、またそれぞれの診療環境に応じて行っているところです。

 それを踏まえた上で、緊急事態宣言時に対応する緊急を要する診療内容ではありませんが、普段からの口腔健康管理の重要性という意味で、インフルエンザを例に、ウイルス感染に抵抗する歯科の重要性についてお話しをしたいと思います。

 本内容は、日本歯科医学会連合ホームページ「新型コロナウイルス感染症について(COVID-19)国民のみなさまへ」からの転載です。
 参考にしていただければ幸いです。

口腔健康管理(口腔清掃)はウイルス感染への水際対策です

 感染症予防のために大事なことは、身体を清潔にすることです。清潔な体の表面に病原菌は感染しにくいのです。しかし、手や体、髪を洗うことは心がけていても、お口の中を清潔にすることを忘れていませんか?

 ウイルスの感染は、鼻と口と目から起こります1)。インフルエンザウイルスの場合、お口が不潔だと、口に入ってきたウイルスが感染しやすくなります。お口を清潔にし、健康に保つことはウイルス感染の水際対策なのです。お口に住んでいる細菌が出すタンパク分解酵素は、ウイルスが粘膜細胞の中に感染することを促進します2)

 ウイルス感染予防のために、お口の衛生管理を心がけて下さい。特に歯周病菌は強力なタンパク分解酵素をもっています。歯周病にかかっている方には、ご自身での口腔清掃と共に、歯科医院におけるプロフェッショナルケアも大事です。

不潔なお口は腸内細菌のバランスを乱して全身の免疫力を弱めます

 ウイルス感染への有効な対策は、体の免疫力を低下させないことです。腸内細菌のバランスは全身の免疫に密接にかかわっています。そのため、腸内細菌のバランスが崩れると、感染症にかかりやすくなったり、さまざまな全身疾患が発症しやすくなることが知られています3)

 お口の細菌が食道・胃を通って腸内にたどり着き、腸内細菌のバランスを乱して全身疾患発症の原因となることが判ってきました4)。お口が不潔な方、特に歯周病にかかっている方は、食事のたびにたくさんのお口の細菌が腸に運ばれるため、全身の免疫力が低下するリスクが高まります。

お口が不潔だと肺炎のリスクも高まります

 中高年になると誤嚥と言って、食べ物や唾液が気道に入ってしまうことがあります。お口が不潔だと、この時にたくさんの細菌が気管に入って肺にまで至り、誤嚥性肺炎という肺炎を起こしてしまいます。誤嚥のリスクが高い方は、ウイルス性肺炎のリスクも当然高くなります。

 さらに、歯ぐきに住む歯周病菌が血流にのって全身を駆け巡り、体のあちこちに炎症を起こします5)。また、歯ぐきの炎症により作られた炎症を起こす物質(炎症性物質)も血流にのって全身へとばらまかれます。その結果、体の免疫が乱されてウイルス感染による炎症症状が進みやすくなってしまいます。

注意してください!コロナウイルスは口からもやってきます

 現在、中国からたくさんの論文が発表されています。これらの論文は、ウイルス感染が「口腔からも始まる」可能性を示しています1,6)。今後ますます検証が進むと、コロナウイルス感染の予防には口腔衛生管理が重要であることがはっきりしてくることでしょう。

 手洗い・うがいに加えて、お口のセルフケア(丁寧な歯磨き)とプロフェッショナルケア(歯科医院での専門的クリーニング)を心がけてください。また、舌を磨くこともウイルス感染予防に効果があります。

引用文献

1) Peng X, et al. Int J Oral Sci.12(1):9, 2020
2) 松山州徳. ウイルス.61巻1号,pp.109-116,2011
3) 安藤朗編:腸内細菌と臨床医学.別冊・医学のあゆみ.医歯薬出版, 2018
4) Olsen I, et al. J Oral Microbiol. 11(1):18, 2019
5) Beck JD, et al. Periodontol 2000.23:110-20, 2000
6) Yan Y et al. Dermatol Ther.13:e13310, 2020
参考動画:日歯8020テレビ「インフルエンザ予防と歯周病菌」

2020年05月 公開

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