一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
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トピックス&オピニオン―新型コロナウイルス関連

肥満は新型コロナウイルス感染の予後を悪化させる

宮崎 滋
公益財団法人結核予防会 理事・総合健診推進センター 所長
日本生活習慣病予防協会 理事長

 新型コロナウイルス(COVID-19)の拡散は収まっておらず、不安な気持ちで生活しておられる方も多いと思います。現在(4月30日)、 緊急事態宣言による「Stay home」により感染の拡大を防ぐ方策がとられており、1日も早い感染の収束が望まれます。

 COVID-19は、ほとんど症状のない軽症の人もいれば、急速に重症化してICU(集中治療室)でも救命できない人もあるというように、予後はさまざまです。

肥満者はCOVID-19重症化のリスクが高い

 WHO(世界保健機関)はCOVID-19の感染や重症化の危険因子を挙げて、それに該当する方の注意を促しています。

 その危険因子として、1)65歳以上、2)慢性肺疾患、3)喘息、4)糖尿病、5)重症心疾患、6)透析中の腎疾患、7)免疫能の低下、8)肝疾患などが示されていますが、これらのほかにも重要な危険因子として「肥満」が報告されています。

 中国ではCOVID-19が収束しつつありますが、その中国から、肥満が危険因子であるとする報告がありました。中国の温州医科大学のZhengらの報告1)では、代謝性疾患に関連する脂肪肝を持っている患者のうち、BMI 25以上の肥満者は、BMI 25未満の普通体重の人に比べ、重症化の危険度が、6倍も高いことが示されました。年齢や性別、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症という危険因子で調整後もなお、統計的に有意だったとのことです。

 温州の3病院に入院したCOVID-19患者214例中、代謝性疾患関連脂肪肝を有する患者66例を対象に、BMI25以上の肥満者45例と、BMI25未満の非肥満者21 例について比較検討が行われました。その結果、重症者は、非肥満者では2例(9.5%)であったのに対し、肥満者では17 例( 37.8%)でした。

 また欧米でも、ロンドン大学のHillらの報告2)によれば、ICUに入室治療したCOVID-19患者の73%が男性で、73.4%がBMI25以上の過体重(Overweight)でした。ICU治療後、退院できた患者は、BMI25未満の普通体重では56.4%であったのに対し、BMI30以上の肥満者では42.4%に過ぎなかったと報告されています。

 これらの報告から分かるように、肥満者はCOVID-19感染後に重症化しやすく、予後不良と言えます。

ではなぜ肥満者は重症化しやすく予後が悪いのか?

 肥満者は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を合併することが多く、その結果、心臓病になりやすく、抵抗力も弱いため、COVID-19に感染しやすくて重症化しやすいと考えられます。しかし、同じ肥満でも女性より男性が重症化しやすいことから、単なる肥満より内臓脂肪型肥満が影響している可能性が高いと思われます。

 重症化の原因は、ウイルスそのものによる肺炎ではなく、ウイルス感染によって引き起こされる炎症性変化によりインターロイキン6などのサイトカインが爆発的に増加する「サイトカインストーム」だと考えられています。  

 内臓脂肪型肥満の人は脂肪蓄積のため全身の慢性炎症状態になっているので、ウイルス感染を契機に内臓脂肪から大量のサイトカインが放出されるのが原因ではないか、ということのようです。

 また、内臓脂肪が蓄積すると横隔膜を押し上げ、肺活量が低下するなどして肺機能が低下するので、換気が不十分となり酸素飽和度が下がり、最終的には二酸化炭素が増加すると考えられます。

肥満している人のCOVID-19対策

 肥満者が今すぐ痩せることはまず不可能ですので、感染しないように手洗いやうがい、マスク着用などの対策を人一倍しっかり続けることが必要です。

 また、外出自粛のために家にいる時間が長くなると、運動不足になります。さらに、つい食べ過ぎるので、運動や食事に注意し、いま以上に体重が増えないように心がけることが重要です。

 なお、新型コロナウイルス感染症対策本部が策定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」には、「自粛の対象とならない外出」という項目があります3,4)。その「自粛の対象とならない外出」とは「生活の維持に必要なもの」で、具体的な例として「医療機関への通院、食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩など」とされています。つまり、「屋外での運動や散歩」はそもそも現在の自粛の対象ではないということ。もちろん、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つことは大切ですが、天気の良い日は、外に出て身体を動かしてみましょう。きっと、気分転換になるはずです。

 COVID-19との闘いは、まだしばらく続きそうです。私たち一人ひとりが、いま少し、それぞれの立場でのStay homeに努め、なんとかこの世界的試練を乗り越えましょう。

文献・引用元

1) Zheng K, et al. Metabolism, 2020, April 19:154244
2) Science and Technology, 2020, April 10
3) 緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業で働く方々等の感染予防、健康管理の強化について(厚生労働省)
4) 新型コロナウイルス感染対策 スポーツ・運動の留意点と、運動事例について(スポーツ庁)

2020年04月 公開

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