一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
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トピックス&オピニオン―新型コロナウイルス関連

新型コロナウイルスービタミンDによるCOVID-19対策

蒲原 聖可
健康科学大学 客員教授・DHC特別研究顧問
日本生活習慣病予防協会 顧問

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防法は、 ウイルスへの接触機会を減らす、 私たちの身体の抵抗力を高める、の2つです。前者については、新型コロナウイルスとの共存を想定した「新しい生活様式」が示されています。一方、後者での対策は、ウイルスの宿主となる人の側で、ウイルス感染に対する抵抗力を高めることです。具体的には、適切な食事・運動・睡眠であり、特に、機能性食品成分が注目されています。

 例えば、ビタミンやミネラルといった必須栄養素は、身体の免疫能の維持に、文字通り必須です。特に、ビタミンDは、免疫賦活作用や抗ウイルス作用、抗炎症作用を有しており、COVID-19の感染予防および重症化予防の働きが期待されています。そしてすでに、COVID-19の罹患率や死亡率、重症度と、ビタミンDとの関係が報告されています。

 本稿では、COVID-19の感染予防、軽症者の重症化予防に関するビタミンDのエビデンスを紹介します。

ビタミンDが呼吸器感染症を予防

1. ビタミンD不足は呼吸器感染症のリスク

 ビタミンDは、ウイルス性呼吸器感染症に対する自然免疫系の維持に必須です。これまでの多くの研究により、ビタミンDが不足/欠乏していると、急性ウイルス性呼吸器感染症や市中肺炎のリスクが上昇すると報告されています。

2. ビタミンDサプリメントとウイルス性呼吸器感染症

 ビタミンDサプリメントが、実際にウイルス性呼吸器感染症の予防に有効という研究も報告されています。例えば米国では、長期療養施設の高齢者に、高用量のビタミンDを投与した結果、急性呼吸器感染症の発症が予防できました。また、乳児において、ビタミンDサプリメントによる肺炎(下気道炎)の予防効果も示されています。

3. インフルエンザを予防するビタミンDサプリメント

 さらに、複数の臨床研究により、ビタミンDサプリメントの季節性インフルエンザ予防効果が示されています。

 まず、国内からは、東京慈恵会医科大学による臨床試験が報告されています。この研究では、学童を対象に1日あたり1,200IU(30㎍;マイクログラム)のビタミンDサプリメント投与することによって、季節性インフルエンザ(A型)の発症リスクが42%減少しました。

 また、海外での多施設共同ランダム化比較試験では、乳児に1,200IU(30㎍)のビタミンDが投与され、インフルエンザ症状からの早期の回復、ウイルス量の速やかな減少といった働きが示されました。さらに、1,300人を対象にした解析では、ビタミンDサプリメント投与により、インフルエンザを含むウイルス性呼吸器感染リスクが19%有意に減少したということです。

COVID-19とビタミンD

1. COVID-19の特徴とビタミンD

 COVID-19では、炎症反応が亢進し、肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心不全、敗血症のリスクが高くなります。そして、心血管疾患や慢性呼吸器疾患、糖尿病、高血圧といった基礎疾患を有する人で、高い死亡率が示されています。また、これらの生活習慣病患者では、ビタミンDの不足や欠乏が多いこともわかっています。

2. ビタミンD低値はCOVID-19予後不良

 さきほどビタミンD低値は、インフルエンザなどの感染リスクを高めると書きましたが、COVID-19の場合でも例外ではなく、やはり感染リスクや重症化リスクを高めます。

 その報告として、まず欧州20カ国において、ビタミンD値と、COVID-19との関連を調べた研究があり、血中のビタミンD値が低いと、COVID-19の罹患・死亡率が高い、という相関が見出されました。特に、スペインやイタリア、スイスでは、高齢者においてビタミンD低値が顕著だったとのことです。

 米国では、ビタミンD欠乏が認められたCOVID-19患者に、高用量のビタミンDを投与したところ、ビタミンD値の正常化、入院期間の短縮、必要酸素量の減少、炎症の改善といった臨床的な治療効果が報告されています。

 また、英国からの報告では、COVID-19感染リスクについて、顕著な人種差が見出されています。具体的には、白人に比べて、黒人では感染リスクが5.32倍、南アジア人では2.65倍であったとのこと。そして別の研究では、白人に比べて黒人やアジア人は、ビタミンDレベルが低いことが知られています。

 加えて、英国での別の研究によると、ビタミンD欠乏症では、COVID-19の重症化リスクが高いことが示されました。

 さらに、COVID-19の予後不良群では、ビタミンDが低値であることもわかっています。具体的には、1,368人の新型コロナウイルス感染症患者を対象に解析が行われた結果、ビタミンD値は、予後良好の患者(669人)に比べて、予後不良の患者(634人)で低値でした。

 このようなエビデンスの蓄積を基に、COVID-19対策として、公的機関がビタミンD摂取を推奨する流れも既に起こり始めています。例えば英国のNHS(国民保健サービス)では、COVID-19に関する啓発の中で、「外出抑制に伴う皮膚でのビタミンD合成低下に対する対策として、ビタミンDサプリメントの利用も考慮すべき」としています。

3. ウイルスの受容体とビタミンDの働き

 では、ビタミンDの不足や欠乏が、なぜ、COVID-19の重症化や予後不良と関連するのでしょうか。その答を知るために、現在、COVID-19との関連が着目され研究が進められている、RAS(レニン-アンジオテンシン系)について、まず解説します。

 新型コロナウイルス感染症の原因となるウイルス(SARS-CoV-2)は、気道の細胞表面に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合し、感染が成立します。ACE2は粘膜に発現しており、臓器・組織では、心臓、腎臓、腸、血管内皮細胞の他、肺(肺胞況疹緘藝挧Δ肇泪ロファージ)に存在します。

 そのACE2は、炎症や血管収縮を抑える働きがあります。ところが、SARS-CoV-2がACE2と結合して細胞内に侵入する際、ACE2の働きが抑制されてしまいます。つまり、SARS-CoV-2感染により生じるACE2の減少が、肺や心血管系での病態の悪化に関連し、COVID-19が重症化する機序の一つと考えられています。

4. ビタミンDによるCOVID-19重症化抑制メカニズム

 さて、それでは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とレニン-アンジオテンシン系(RAS)の関係に、ビタミンDがどのように関与するのかという話に進めます。実は、ビタミンDはRASの重要な調節因子であって、COVID-19の重症化リスク低減において、次のような働きをします。

 まず、SARS-CoV-2がACE2に結合し、ACE2の働きが抑えられます。すると炎症が惹起されて肺血管攣縮などが生じ、COVID-19が重症化します。

 これに対してビタミンDは、RASにおいてACE2発現を誘導し、ACEを介したアンジオテンシン兇了裟犬鰺淦することで、肺血管攣縮リスクを低下させます。さらにビタミンDは、アンジオテンシンの上流に位置するレニンにも働き、その活性を阻害することで、アンジオテンシンIIの産生をさらに減少させます。

 つまり、ビタミンDは、新型コロナウイルスによるACE2活性の低下・ACE活性の上昇・アンジオテンシンII産生量の増加といった作用を抑えることで、肺血管攣縮を抑制し、COVID-19の重症化リスクを低下させる、というメカニズムです。

食事だけでビタミンDが摂れますか?

1. ビタミンD不足の現状

 このようにCOVID-19対策としても注目されるビタミンDですが、その摂取量不足が、いま、世界的な課題になっています。この現状に対して、欧米の一部では、食品へのビタミンD強制添加を行い、課題を解決しています。

 国内に目を向けても、日本人を対象にした多くの研究において、ビタミンDの不足や欠乏が高率に認められています。特に日本人の高齢女性は、ビタミンDが不足し、転倒リスクが高い状況にあることもわかっています。

2. ビタミンD状態の判定基準

 ビタミンDが不足しているか否かといった栄養状態の評価は、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度[25(OH)D]の測定により行われます。一般に、25(OH)Dが30.0ng/mL以上を「充足」、20〜30ng/mLは「不足」、20ng/mL未満は「欠乏」と判定されます。

3. ビタミンDの食事摂取基準:日本は米国の半分以下

 国内でもビタミンD不足に対する対策は始まっています。例えば厚生労働省が健康の保持・増進のために望ましい栄養摂取量として示している「日本人の食事摂取基準」の最新バージョンである2020年版では、ビタミンDの目安量が従来の5.5㎍から8.5㎍に引き上げられました。といっても、この値は米国の基準の半分以下の水準にとどまっています。また、日本では成人の基準は一律となっていますが、米国では、壮年期以降の世代は基準が高く設定されています。

4. 日光浴は非現実的

 さて、既によく知られているように、高齢者はCOVID-19の重症化リスクが高くなります。そこで、高齢者では、特にビタミンDの充足が大切と言えます。

 ビタミンDの供給源として、食事からの摂取と、日光浴による皮膚での合成という経路があります。

 ただし、高齢者は、少食の傾向、および消化吸収能の低下などのために、食事からだけで十分な量のビタミンDを確実に摂ることは容易ではありません。また、毎日の食材のコストや調理の手間も考える必要があります。

 さらに、日光浴も高齢者では、皮膚でのビタミンD合成能の低下、あるいは熱中症予防等のため外出頻度の減少といった影響があり、それほど当てにできません。「ビタミンDがCOVID-19対策として有用」と解説している情報の中には、食事と日光浴を勧める啓発も散見されますが、リアルワールドでのソリューション提供、臨床課題の解決という視点からは、適切とはいえません。

 なお、英国の地域居住高齢者を対象にした臨床研究では、ビタミンDサプリメントの4,000IUと2,000IUが比較された結果、ビタミンD充足には、4,000IUが適切とされました。

5. ビタミンDサプリメントの用法・用量と安全性

 ビタミンDのサプリメントの成分は、医療用医薬品として使われている活性型ビタミンD製剤とは異なり、その前駆体であるビタミンD3 (コレカルシフェロール)です。国内で市販されているビタミンDサプリメントの大半はビタミンD3 です。

 そのビタミンDサプリメントの摂取量に関して、1日あたり2,000IU(50㎍)までは、特に問題となる副作用や有害事象は認められていません。骨代謝の改善、骨粗鬆症や転倒・骨折リスク低減のためには、少なくとも、800 IU (20㎍)が必要です。

 一般に、健康増進・未病改善のためのビタミンDサプリメントの摂取量として、1日あたり800〜2,000 IU(20〜50㎍)が至適用量として推奨されています。店頭販売されているビタミンD含有サプリメントは、1粒あたり1,000IU(25㎍)の製品が多く、気になる値段は1,000 IU、30日分で300円ほど。

 サプリメントや健康食品の多くは、継続利用が前提ですので、安全性や有効性に加えて、経済性(費用対効果)の高い製品を選ぶことも大切なポイントです。

まとめ

 COVID-19予防のためのビタミンDのエビデンスを解説しました。

 COVID-19の高リスク群とされる人は、基礎疾患を有する人や高齢者です。そして、高リスク群に共通して、顕著に不足しているビタミンは、ビタミンDです。

 今回はCOVID-19との関連を中心にお話ししました。一方、近年の研究により、生活習慣病や慢性疾患でのビタミンD低値、および高齢者の多くがビタミンD欠乏や不足であることが示されています。「日本人の食事摂取基準」2020年版では、ビタミンDの目安量が引き上げられたものの、それでも、米国等での基準の半分以下の水準です。

 COVID-19に関しても、その対策は今後も継続的に必要とされることでしょう。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクに対する予防法、およびCOVID-19の重症化予防として、セルフケアにおけるビタミンDサプリメントの利用も選択肢と考えられます。

関連情報: 新型コロナウイルス―サプリメント・機能性食品の使い方

参考文献

蒲原聖可:新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対策における機能性食品成分の臨床的意義 : ナラティブ・レビュー.Functional Food Research 2020;16: 40-50.
蒲原聖可:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 予防におけるビタミン・ミネラルの臨床的意義.Clinical and Functional Nutriology. 2020;12:188-196.
蒲原聖可:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防および重症化軽減におけるビタミンDの臨床的意義. 日本統合医療学会誌.2020; in press.

2020年08月 公開

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