一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病
メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛連載

2. 肥満とメタボリックシンドローム Q&A

監修/井上 修二
日本生活習慣病予防協会理事
桐生大学副学長・医療保健学部学部長

Q.「肥満」は病気ですか?

A.からだに必要以上の脂肪が溜まっている状態が「肥満」です。肥満そのものは、からだにとって一種の異常事態ではありますが、それだけでは病気とは言えません。

 肥満であることに加えて、肥満に伴う糖尿病(糖尿病予備群を含む)や高脂血症や高血圧や高尿酸血症(痛風)、脂肪肝、関節症などの病気が起きていたり、肥満のタイプが内臓脂肪型肥満である場合には、肥満を単なる身体現象ととらえるのではなく、病的な肥満である「肥満症」という、医学的に減量が必要な病気としてとらえます。 ただ、現実的な話をすると、肥満の人はしばしば先に挙げた病気のうち一つぐらいはもっているので、たいてい肥満症に該当します。つまり、肥満の人の多くは、肥満症という病気である可能性が高いということです。

Q.そもそも、どんなときに「肥満」と呼ばれるのでしょうか?

A.古くから標準体重の計算方法はいろいろ提案されてきました。身長から110引くとか、100を引いて0.9を掛けるなどして標準体重を求める方法を記憶されている方もいらっしゃることでしょう。そのようにして求めた標準体重を基準に、そこから何パーセントオーバーしたら肥満、といった具合に判定したりしていました。

 しかし今ではBMIという数値を使って判定する方法が、信頼できる判定基準として世界的に利用されています。

 BMI(body mass index)は、体重(kg)を身長(m)で2回割った数値です。BMIが22にあたる体重が、標準体重とされ、25以上だと「肥満」と判定されます。ちなみに、正常体重は18.5と24.9の間で、18.5未満は低体重となります。

例)身長170cmで体重70kgなら、70÷1.7÷1.7=24.4
  BMIは24.4です。

Q.肥満症とタボリックシンドロームは別ですか?

A.両方とも、からだに脂肪が過剰にたまる「肥満」による病気を、予防・治療しようとする考え方に基づき、診断基準が設定されていますが、細かい点では少し異なります。

 肥満症は、脂肪が過剰に溜まっているかどうかを、判定するBMIと肥満に合併しやすい病気の合併があるかどうかで診断します。診断基準は、BMI25以上で?肥満に合併しやすい病気が合併している場合 ?そのような合併がなくとも内臓肥満(腹部CTで内臓面積100c?以上)が確認できる場合のどちらかがあることです。

 一方のメタボリックシンドロームでは、内臓脂肪型肥満に焦点を絞り、内臓脂肪が溜まった状態と相関関係があるウエスト(腹囲)径が最も大切な判定基準になっています。判定基準はウエスト周径が男性では85cm以上、女性では90以上で高血糖(110mg/dl以上)、高中性脂肪血症(150mg/dl以上)、低HDLコレステロール血症(40mg/dl未満)、血圧高値(上が130mmHg以上、下が85mmHg以上)、のうち2つ以上がある場合です。BMIが小さくてもウエストサイズが大きく内臓脂肪型肥満があれば、メタボリックシンドロームの可能性があります。ただ、肥満症は病気ですが、メタボリックシンドロームは必ずしも既に病気ということではなく、“病気の予備軍”という意味が強い状態です。

 この違いは、なんのためにその病気を診断するのかという、目的の違いでもあります。

 どういうことか詳しくお話ししましょう。

 肥満症の場合は、肥満に伴って生じる病気として治療の対象になります。具体的には、これまで何度も出てきた糖尿病や高脂血症や高血圧や動脈硬化、動脈硬化による心臓病・脳卒中などが合併した場合が治療すべき主な対象ですが、それに加えて、高尿酸血症、脂肪肝、関節症、腰痛症、睡眠時無呼吸症候群、女性における月経異常などが合併した場合も含まれます。これらの病気は、内臓脂肪だけでなく、むしろ皮下脂肪が過剰に溜まっていることが、大きな影響を及ぼしていることが多くあります。ですから、皮下脂肪型肥満も含めた「肥満」を見つけるのに役立つBMIが優先されるわけです。

 これに対してメタボリックシンドロームの場合、それを判定し治療する目的は、動脈硬化の進行を抑えて心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことです。前回解説しましたように、動脈硬化の進行とより密接に関係しているのは内臓脂肪型肥満ですから、それを見つけるためのウエストサイズが判定として優先されるわけです。

Q.肥満症とタボリックシンドロームでは、どちらが重い病気ですか?

A.病気を診断し治療する目的が異なりますし、肥満の程度の差もありますから、単純な比較はできません。動脈硬化の進行予防――心筋梗塞や脳梗塞などを防ぐ――ということに絞って考えてみるなら、内臓脂肪型肥満に加えて二つ以上の病気あるいは異常を併発していることによって判定されるメタボリックシンドロームのほうが、より注意が必要な状態だと言ってよいかもしれません。肥満症は病気ですが、メタボリックシンドロームは病気の一歩手前の状態も含まれています。

Q.BMIが25未満で「肥満」に該当しないときでも、メタボリックシンドロームと診断されることもありますか?

A.あります。ウエストサイズが男性85cm以上、女性90cm以上あれば、内臓脂肪型肥満と判定します。これに先程述べた病気または異常が2つ以上ある場合はBMIに関係なくメタボリックシンドロームと判定されます。このとき、BMIが25未満であることも珍しくありません。いわゆる“隠れ肥満”です。

Q.ウエストサイズの基準値が、男性と女性で異なるのはなぜですか?

A.内臓脂肪によるからだへの悪影響は、男性も女性も、臍の位置でCTスキャンを検査したときの内臓脂肪の面積が 100 c? 以上になったあたりから、より顕著になることがわかっています。この「内臓脂肪の面積が 100 c?」に相当するウエストサイズが、男性は85cm、女性は90cmとなることがわかったので、これが判定基準になりました。

Q.ウエストが基準値より低ければ、心配ないということですね。

A.一つ前のQ&Aの解説でも述べましたように、内臓脂肪によるからだへの悪影響は、ウエストサイズが基準値を超えるあたりから、より顕著になることがわかっています。したがって、基準値に達していなくても、内臓脂肪は多少からだに悪影響を及ぼしている可能性があります。

 とくに、メタボリックシンドロームの診断基準の二番目に挙げられている、血糖高値(糖尿病予備群も含む)や高脂血症、高血圧(正常高値も含む)が複数ある場合は、メタボリックシンドロームに準ずる状態とみて、対処する必要があります。

2006年08月 公開

※記事内容、肩書、所属等は公開当時のものです。ご留意ください。

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