一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病
メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛連載

12. メタボリックシンドロームの検査と自己チェック Q&A

監修/和田 高士
日本生活習慣病予防協会理事
東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授

Q.メタボリックシンドロームの診断に必要な腹囲の測り方の説明で、よく「おへその位置で」と言われますが、なにか意味があるのでしょうか?

A. 内臓脂肪蓄積の程度をできるだけ正確に知るためです。前回解説しましたように、もともとメタボリックシンドロームの診断基準の基準値は、おへその位置でCTスキャンをしたときの内臓脂肪面積が100平方センチメートルを腹囲に換算して得られた数値です。腹囲は、実際に測ってみるとわかるように、測る位置によってかなり差があります。また勘違いされやすいのは、体型のウエストサイズとは異なることです。メタボリックシンドロームの診断に使用されるのは、おへその位置でのおなか周り(腹囲)です。

Q.腹囲とBMIは、どのように使い分けるのですか?

A. このコーナーの第1・2回目の「肥満とメタボリックシンドローム」でも解説されていますように、肥満や過体重によるからだへの悪影響の中でも、とくに動脈硬化の予防という観点でみるなら、腹囲を基準にしたほうが、コントロールに適していると考えられます。ただし、肥満は動脈硬化以外のさまざまな病気の危険因子なので、BMIも基準値内にしたほうがよいことは間違いありません。

Q.家で体脂肪率を測っていますが、測るたびに結果が異なります。故障でしょうか?

A. 現在市販されている体脂肪計は、微弱な電気をからだに流して、その抵抗から脂肪の量を推測して結果を表示します。ですから同じ人でも測定時の条件で変化します。また測定する部位(装置)によっても異なります。

 このようなことを理解して、いつも同じ時間帯に、なるべく同じような条件で測定するとよいでしょう。もちろんそのようにしても、若干の誤差はあります。しかし、毎日測定して記録していれば、その平均値が実際の数値に近いと考えてよいでしょう。

 また、数か月単位の長い目で見れば、体脂肪率が増えているのか減っているのかを知ることができます。それによって、ダイエットで体重は減っているのに体脂肪率は減らない、つまり、大切な筋肉が減ってしまっているという、不適切な減量法を避けることもできます。

Q.血圧も測るたびに違う結果が出ます。これも機械の故障ではないのでしょうか?

A. 血圧は測定時の環境などによって、実際には瞬時、瞬時変化しています。2回続けて測って全く同じになることは、非常に珍しいと言えるくらいです。ですから、毎日、同じ時間帯(なるべく起床後トイレに行ってから食事を食べる前。薬を服用している方は、服用前)に、同じ姿勢で測り、記録するようにしてください。

 なお、もちろん、機械が故障する可能性もゼロではありませんので、心配なら病院に持参し測り比べてもらってください。

Q.尿糖検査でメタボリックシンドロームを見つけるには、食後2時間後ぐらいに測定するとよいという話でした。その理由を教えてください。

A. そのようにして測ると、最も陽性になり糖尿病を発見しやすいからです。尿糖が陽性になるのは血糖値が高いからですが、その血糖値が最も高くなるのは食事の1〜2時間後です。反対に食事の前は、血糖値が低く、尿糖も陰性の確率が高いと言えます。

 このことから、メタボリックシンドロームを見つけるには、なるべく食事の直前にトイレにいって一度、膀胱を空にしておき、食後に作られた尿で測定するとよいのです。陽性なら、医療機関を受診して詳しい検査を受けてください。尿糖試験紙や尿糖計は薬局で購入できます。

Q.最近のニュースで、高脂血症(脂質異常)の治療で大切なのはLDL- コレステロールの数値だということを聞きましたが、健康診断の結果を見ても、総コレステロールとHDL- コレステロールだけで、LDL- コレステロールが出ていません。どうしたらよいでしょうか?

A. コレステロールの値が動脈硬化の進行と相関関係があることは、古くからわかっていましたが、中でも悪玉と呼ばれるLDL-コレステロールとより強い相関関係があることは、少し遅れてわかってきたことです。測定精度が安定するようになったのはつい最近のことです。そのため今でも健康診断でLDL-コレステロールの値を示されないこともよくあります(費用の問題もあります)。このような場合、次の式でLDL-コレステロールの値を計算できます。

総コレステロール−HDL-コレステロール−(トリグリセライド(中性脂肪)÷5)=LDL-コレステロール

 なお、トリグリセライド(中性脂肪)の値が400mg/dL以上の場合は、この式の信頼性が低くなります。

Q.ヘモグロビンA1cの基準値が4.3 〜5.8 パーセントとなっていましたが、健康診断の「基準値」の欄には、もっと低い数値が示されていますが…

A. ヘモグロビンA1cは検査時点から過去1〜2か月間の血糖値の平均値と相関関係がある検査値です。一回の検査で過去1〜2か月間という長期間の健康状態がわかるので、糖尿病の治療においてはコントロール状態を把握するのにとても重宝する検査なのです。健康診断ではより軽症の糖尿病を発見し、早期に対策をとることに主眼がおかれます。そのため、健康診断でのヘモグロビンA1cの基準値は低めに設定されます。2008年から開始される特定健診ではヘモグロビンA1cの基準値は5.2%以下に、空腹時血糖の基準値も110mg/dLから100mg/dLに引き下げられます。

 なお、ヘモグロビンA1cは腎臓病や溶血性貧血などのほかの病気で増減する点に注意が必要です。このため、糖尿病かそうでないかを診断する際には、あくまで血糖値が判定基準であり、ヘモグロビンA1cは参考情報として利用されています。

Q.尿酸値や肝機能の検査も、メタボリックシンドロームに関係があるのでしょうか?

A. はい。尿酸値が高くなる高尿酸血症は、痛風の原因として知られていますが、実は内臓脂肪の蓄積と相関関係があることがわかっています。これには、内臓脂肪蓄積によりインスリン抵抗性が強くなって、本来なら腎臓でろ過されて尿の中に排泄される尿酸が、腎臓で再吸収されたりするためではないかと考えられています。高尿酸血症もメタボリックシンドロームも、ともに肥満男性に多いことも、両者の関係が深いことを示唆しています。

 このような病気の原因の共通性に加えて、尿酸値が高いこと自体が、動脈硬化の進行を早めることを指し示す研究結果もあります。

 肝機能については、従来、お酒の飲み過ぎによるアルコール性肝炎や、あるいはB型、C型などのウイルス性肝炎を見出だすための検査項目として位置付けられてきました。しかし最近、アルコールをそれほど飲まず、ウイルス感染もないのに肝機能障害が進行している人が少なくなく、その原因はおもに脂肪肝であることが注目されるようになっています。非アルコール性脂肪性肝炎、英語の略称ではNASH(ナッシュ)と呼ばれます。

 AST(GOT)、ALT(GPT)の検査は、肝臓の細胞が壊れる量に比例して血液中に現れる酵素のことです。その値が高いということは、肝臓の細胞が多く破壊されていることを意味します。メタボリックシンドロームでは、余分な中性脂肪が肝臓に蓄積することなどから、NASHの頻度が高くなりますので、これらの数値にも気をつけたほうがよいでしょう。

2007年05月 公開

※記事内容、肩書、所属等は公開当時のものです。ご留意ください。

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