一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病
メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛連載

6. 高脂血症とメタボリックシンドローム Q&A

監修/中村 治雄
元日本生活習慣病予防協会理事
三越厚生事業団常務理事

Q.高脂血症の原因はなんですか?

A.高脂血症は生活習慣病の一つです。つまり、血清脂質が高くなりやすい遺伝的な背景がある人が、食べ過ぎや飲み過ぎ、それによる肥満など、血清脂質を高くするような生活を送っていることで発病します(遺伝的なことだけで血清脂質が高くなる患者さんも、まれにいます)。

 日本では戦後、生活習慣の欧米化が進み、徐々に高脂血症がメジャーな病気になってきました。食生活にはおいては、摂取エネルギー自体はあまり変化していないものの、脂肪分の摂取量、とくに動物性脂肪の摂取量が増加してきました。そして、摂取したカロリーを消費する機会、つまり、からだを動かす機会も、減ってきています。こうしたことが、高脂血症の増加につながっています。

 高脂血症の原因のうち、遺伝的なことは修正できませんが、生活習慣は修正可能です。ですから、高脂血症の治療は、生活習慣の改善が基本となります。このことは、メタボリックシンドロームについても同じです。

Q.日本人は心臓病になりにくい人種だから、コレステロールが高くても、薬を飲まないほうが良いという話を聞きました。本当でしょうか?

A.日本人は伝統的に動物性脂肪をあまりとらず、菜食中心の食生活を送ってきました。だからコレステロール値が高くなく、心臓病も欧米に比べて少ないのは事実です。魚をよく食べることも、血液をサラサラにするのに役立っているのでしょう。

 ただ、現在の日本人の食生活はどうでしょうか? 動物性脂肪の摂取量は年々増え、若い世代のコレステロール値は、アメリカと逆転現象が起きています。

 人生の前半をかつての日本で生活していた現在の高齢者にとっては、確かに今からコレステールを下げる治療をしても、効果はそれほど高くないかもしれません。しかし、問題は、今、実年世代の方やそれより若い世代の方です。こうした世代の方は、もはやかつての日本食とは縁遠い、欧米化された食生活を送っていることでしょう。高脂血症をそのまま放置すれば、何年かあとに大変なことになってしまう確率が高いことは間違いありません。食事療法や運動療法を続け、それでも検査値が高いのであれば、薬が必要です。

 なお、コレステロール値を下げる薬は、単に動脈硬化の進行を抑えるだけでなく、すでにある程度進行してしまっている動脈硬化巣(血管内腔が狭くなっている部分)の血管壁を安定化させ、心筋梗塞などの発作が起きにくくする効果もあります。

 最近、国内で日本人を対象に行われた大規模な臨床研究の結果が発表されました。それにより、日本人でも高脂血症を薬で治療することで、心臓発作の頻度が3割以上低下することが確認されました。しかもこの研究では副作用も特に現れることなく、しかも従来、薬の効果がやや疑問視されていた、閉経後の女性の高脂血症治療にも、薬が役立つことが立証されました。「日本人はコレステロールが高くても良い」とは、もう言っていられません。

Q.コレステロールが低い人ほど死亡率が高くなるという話もあるそうですが…

A.そういう統計も確かにあります。コレステロールは、全身の細胞の細胞膜の形成などに必要不可欠なものですから、コレステロール値があまり低過ぎると、高血圧があれば、血管を破り脳出血の頻度が高くなったりもします。

 しかし、注意しないといけないのは、なにも治療していないのにコレステロールが低い状態と、高脂血症の治療のためにコレステロールを低く抑えている状態を、一緒にしないことです。治療をしているわけではないのにコレステロール値が低いということは、高齢や癌であるといった影響で、栄養状態が良くないことを表している可能性が考えられます。栄養状態が悪ければ、感染症などのさまざまな病気にかりやすくなりますから、死亡率が高くなるのは、言わば当然です。

 そうではなく、むしろ栄養のとり過ぎでコレステロール値が高くなっている場合、それを下げなければ動脈硬化が進行して、心筋梗塞や脳梗塞になりやすくなってしまいます。

Q.メタボリックシンドロームの診断基準には、LDL- コレステロールや総コレステロールが入っていません。高脂血症でメタボリックシンドロームにも該当する場合、LDL- コレステロールは気にしなくて良いのでしょうか?

A.メタボリックシンドロームという病気の診断基準がなぜ設けられたのかについて、前回少しお話ししました。メタボリッシンドロームは、動脈硬化の危険因子であることがわかっていたコレステロールを下げたにもかかわらず、心筋梗塞などの動脈硬化性の病気が完全には抑え切れないことから、原因を追及していった結果、浮かび上がってきた状態です。今でも、動脈硬化性疾患を引き起こすいくつもの危険因子のうち、単独で最も強い影響力を持っているのがLDL-コレステロールであることは、変わりありません(“超悪玉”と言われるsdLDL-コレステロールは、今のところまだ一般的な検査項目にはなっていません)。

 ですから、高脂血症の患者さんが、メタボリックシンドロームにも該当する場合、まず、LDL-コレステロールをしっかり下げることが前提です。そのえで、中性脂肪やHDH-コレステロールに気をつけていくようにします。

Q.超悪玉コレステロールを減らす方法はありますか?

A.“超悪玉”と呼ばれるsdLDL-コレステロールは、中性脂肪の値と相関関係があります。ですから、中性脂肪を下げる治療が、sdLDLも減らせると考えられます。

 もう少し詳しく説明すると、中性脂肪はLPL(リポタンパクリパーゼ)という酵素で分解されるのですが、メタボリックシンドロームではインスリン抵抗性などのためにその酵素の活性が低下していして、それがsdLDLが増えたり、HDLが減ったりする一因と考えられています。そのため、メタボリックシンドロームという状態の基本に近い、インスリン抵抗性を解消すること、さらにさかのぼって言うと、内臓脂肪を減らすことが、sdLDLを減らしたり、HDLを上げることにつながると言えます。また、運動によってLPLの働きを良くするなどでも改善されます。

Q.高脂血症でメタボリックシンドロームのときに処方される薬について教えてください。

A.高コレステロール血症に対しては、スタチンという薬を処方するのが一般的です。脂質の吸収を阻害する薬もあります。高中性脂肪血症に対しては、フィブラートという薬がよく処方されます。フィブラートはHDL-コレステロールを上げるようにも働きます。

 なお、スタチンとフィブラートを一緒に服用すると、副作用が起こりやすくなると言われています。副作用の予防のためにも、高脂血症とメタボリックシンドロームの両方に該当する場合、薬だけに頼って治療するのではなく、食事療法や運動療法をしっかり続けることが大切です。

2006年12月 公開

※記事内容、肩書、所属等は公開当時のものです。ご留意ください。

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