一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病
メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛連載

8. 糖尿病とメタボリックシンドローム Q&A

監修/池田 義雄
日本生活習慣病予防協会理事長
タニタ体重科学研究所所長

Q.糖尿病の原因はなんですか?

A.糖尿病は生活習慣病の一つです。血糖値が高くなりやすい遺伝的な背景がある人が、食べ過ぎや飲み過ぎ、ストレス過剰など、血糖値を高くするような生活を送っていることで発病します。遺伝的な背景が強ければ、生活習慣によるからだの負担が少なくても発病しますし、反対に遺伝的背景が強くなければ、生活習慣が乱れていても、なかなか糖尿病になりません。

 日本では戦後、生活習慣の欧米化が進み、徐々に糖尿病がメジャーな病気になってきました。食生活にはおいては、摂取エネルギー自体はあまり変化していないものの、脂肪分の摂取量、とくに動物性脂肪の摂取量が増加してきました。そして、摂取したカロリーを消費する機会、つまり、からだを動かす機会が減ってきています。こうしたことが、糖尿病の増加につながっています。

 糖尿病の原因のうち、遺伝的なことは修正できませんが、生活習慣は修正可能です。ですから、糖尿病の治療は、生活習慣の改善が基本となります。このことは、メタボリックシンドロームについても同じです。

 なお、少し専門的な話になりますが、糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病という、二つのタイプに分類されています。このコーナーで前回から解説している糖尿病(メタボリックシンドロームと関係がある糖尿病)は、すべて2型糖尿病についてです。1型糖尿病は、生活習慣とは関係なく発病します。原因ははまだよくわかっていません。

Q.糖尿病とメタボリックシンドロームは、ほとんど同じ病気だと考えてよいのでしょうか?

A.糖尿病でなぜ血糖値が高くなるのかということについて、前回、少し触れましたが、もう一度簡単に言うと、血液中のブドウ糖が細胞に入り込んでエネルギーに変換される過程に必要な「インスリン」というホルモンの働きが不足するために、血液中にブドウ糖があふれかえるからです。インスリンの作用が不足するのには、インスリンの分泌量が減ること、それに、インスリンに対する細胞の感受性が悪くなること、という二つの理由があります。

 後者を医学的には「インスリン抵抗性」と表現します。そのインスリン抵抗性を招く原因が、メタボリックシンドロームです。つまり、メタボリックシンドロームは糖尿病の原因の一部だということです。

 その意味では、糖尿病よりもむしろ、その前段階である「糖尿病予備群」とメタボリックシンドロームの関係が、より強いと考えられます。インスリン抵抗性が主要な原因で糖尿病を発病した場合も――「メタボリッシンドロームを放置していて糖尿病を発病した場合も」と言い換えてもよいでしょう――、やがてインスリンの分泌量が減ってきて、さらに血糖値が高くなってしまうことが少なくありません。そうならないために糖尿病の治療が必要なのですし、より積極的な予備群の段階、メタボリックシンドロームの段階での治療は、さらに有効と言えます。

Q.糖尿病の発病には、必ずメタボリックシンドロームが関係しているのでしょうか?

A.いいえ。そうとは限りません。糖尿病になりやすい遺伝的な背景がある人では、メタボリックシンドロームの診断基準に該当する時期がなくても、血糖値が高くなり、糖尿病と診断されることもあります。ただし、国内の糖尿病患者数が増加し続けている原因の多くは、メタボリックシンドロームの増加が関係していると考えられます。

Q.糖尿病の診断基準を教えてください。

A.正確な診断には、「75gブドウ糖負荷試験」という検査が行われます。75gのブドウ糖が含まれている水溶液を飲んでいただいたあとに何度か採血して血糖値を測定し、その変化から糖尿病かそうでないか、あるいはその中間の糖尿病予備群(境界型)かを判定します。

 空腹時(ブドウ糖を飲む前)血糖値が126mg以上、またはブドウ糖を飲んだ2時間後の血糖値が200mg/dL以上だと、「糖尿病型」の血糖変動と判定されます。空腹時が110mg/dL未満で2時間後に140mg/dL未満なら「正常型」の血糖変動と判定されます。両者の間の血糖値は「境界型」、いわゆる糖尿病予備群です。

 なお、血糖値が著しく高かったり、すでに合併症がある場合などは、この検査をするまでもなく、糖尿病と診断されます。

Q.メタボリックシンドロームの診断基準には、食前の血糖値だけで食後(ブドウ糖を飲んだあと)の血糖値が入っていません。糖尿病でメタボリックシンドロームにも該当する場合、食後の血糖値は気にしなくて良いのでしょうか?

A.メタボリックシンドロームをなぜ診断するのかと言えば、動脈硬化性の病気を予防するためです。血糖値と動脈硬化の進行レベルの相関関係を調べてみると、空腹時の血糖値よりも食後の血糖値とより強い関係があることがわかっています。ですから本来、空腹時の検査ではなく、食後(75gのブドウ糖を飲んだ2時間後)に採血して測定した検査値のほうが、メタボリックシンドロームを発見するのには適しています。

 しかし、住民検診などの目的は、大勢の人を対象に、1回の検査で効率よくいろいろな病気を発見することです。そのため、血液検査もほかの病気を発見するための検査項目との兼ね合いから、空腹時に行われます。検査を受ける人全員に75gのブドウ糖を飲んでもらい2時間待って採血するのには、膨大な労力と費用が必要になるからです。

 よって、メタボリックトンロームでも食後だけ高血糖になっているような人の場合は、見逃されてしまう可能性も否定できないのが現状です。見逃しの可能性を減らすため、空腹時の検査だけでもメタボリックシンドローム・糖尿病予備群を見逃さないように、現在、空腹時の血糖値の基準値を現行の110mg/dLから100mg/dLに引き下げることが検討されています。アメリカなどは、すでに100mg/dLです。

 なお、食後に尿糖を測ることで、自分が糖尿病でないかどうか、糖尿病予備群でないかどうかを、ご自身で調べてみるのもよいでしょう。尿糖を測るのには、試験紙の色の変化から尿糖レベルを判断する方法以外にも、デジタル計測によって数値で尿糖レベルを測定できる機器も販売されています。

Q.尿糖を正しく測る方法を教えてください。

A.説明書に書かれている注意事項をよく守ってください。例えば、試験紙で測る場合には、採尿の容器を清潔にしておくこと、試験紙をすぐに取り出さずに浸してしまうといった間違いをしないことです。

 メタボリックシンドロームや糖尿病予備群の管理には、食後の尿糖測定がより大切です。食後の尿糖を正しく測定するには、食事の直前に一度トイレに行き用を足してから食事を摂ります。そして食後2〜3時間ぐらいたってから、測定してください。

 なぜ食前にトイレに行く必要があるかというと、食事の血糖値が高くないときに作られた尿と、食後の高血糖のときに作られた尿が、膀胱の中で混ざってしまい、尿糖陽性が隠されてしまうのを防ぐためです。なお、ビタミンCを飲んでいると、血糖値が高くても尿糖が陽性になりにくいことがあります。

Q.メタボリックシンドロームで糖尿病のとき、どのような薬が処方されますか。

A.メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満によりインスリンの働きが低下している状態なので、薬物療法では、まず、インスリンの働きを改善して血糖値を下げる薬を使うのが理に適っていると考えられます。具体的には、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬というタイプの薬です。

 また、それらとは別に、食べ物の消化吸収スピードを抑えて食後に血糖値が上がりにくくする薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)や、食後の短時間だけインスリン分泌を増やす薬(速効型インスリン分泌促進薬)なども、処方されることがあります。

 血糖値を下げる効果だけに絞ってみた場合、最も確実な効果がみられる飲み薬は、インスリン分泌を刺激するSU薬といわれるタイプの薬です。ただし、SU薬を服用するときには、体重をしっかりコントロールすることがより大切になります。

2007年01月 公開

※記事内容、肩書、所属等は公開当時のものです。ご留意ください。

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