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高齢者の降圧目標を見直し。食塩摂取量は1日6gを推奨 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2004年版」発行

カテゴリー: 高血圧

 日本高血圧学会から「高血圧治療ガイドライン 2004年版」が発行されました。高血圧治療ガイドラインは2000年に発行されましたが、その後、新しい降圧薬が開発されたことや大規模臨床試験の結果が明らかになったこと、WHO や米国、欧州で新しいガイドラインが発表されたことなどから、国内のガイドラインも改訂が検討されていました。

 2000年版のガイドラインでは、高齢者の降圧目標について「高齢者は脳などの重要臓器に循環障害があることが多く、過度の降圧が循環障害をより進行させる可能性があるため、収縮期血圧140〜160mmHg 以下(年齢を考慮)、拡張期血圧 90mmHg 未満が望ましい。ただしこの設定が妥当かどうかについては今後に残された課題」とされていました。今回、2004年版のガイドラインでは、前期高齢者(65歳以上75歳未満)の降圧目標を140mm/90mmHg 未満と低めに改め、後期高齢者(75歳以上)でも軽症高血圧の場合は140mm/90mmHg 未満を降圧目標として、中等症・重症高血圧(収縮期血圧が160mmHg以上)の場合には、最終的な降圧目標を140mm/90mmHg 未満に置くものの150/90mmHg を暫定的な目標として慎重な治療が必要、とされました。また、糖尿病または腎臓病がある場合の降圧目標は130/80mmHg 未満で、拡張期血圧の目標がより低めに変更されました。若年・中年者の降圧目標は130/85mmHg 未満で、2000年版と同様です。

 食塩摂取量については、従来1日7g 未満とされていたものを1日6g 未満と、より少なめにすることが推奨されました。日本人の食塩摂取量が減少してきたことと、欧米のガイドラインが1日6g 未満を推奨しているためです。

 このほか、治療継続率の向上や不十分な降圧、過剰な降圧の確認などに有用な家庭血圧についてもふれ、家庭血圧が135/85mmHg 以上であれば高血圧とし、125/85mmHg 未満を正常血圧の基準としています。ガイドラインでは家庭血圧の測定により得られる情報として、高血圧の診断だけでなく、白衣高血圧※1や逆白衣高血圧※2、早朝高血圧※3の発見や、夜間血圧※4の測定も可能であり「日常診療の参考とすべき情報」と位置付けています。

 なお、血圧値の分類は2000年版のガイドラインと同様(表1)、予後評価のためのリスクは表2のように層別化されています。

※1白衣高血圧
医療環境(外来など)で測定すると常に高血圧で、非医療環境(家庭)では常に正常な状態。白衣高血圧が有害か否かはまだ確定していません。
※2逆白衣高血圧
白衣高血圧の反対に、医療環境(外来など)で測定すると正常で、非医療環境(家庭)では高血圧状態にあるもの。診察時には高血圧がマスクされていることから「仮面高血圧」とも呼ばれます。
※3早朝高血圧
厳密な定義はありませんが、起床後早朝の血圧がとくに高い状態を早朝高血圧と呼んでいます。心血管病りリスクとなりうると考えられています。
※4夜間血圧
通常、夜間睡眠時の血圧は昼間よりも低くなります。昼間よりも夜間の血圧が10〜20%下がる場合を正常型、0〜10%下がる場合を夜間非降下型、夜間が昼間よりも高い場合を夜間昇圧型、20%以上下がる場合を夜間過降圧型と分類されていて、このうち夜間非降下型と夜間昇圧型は対策が必要です。夜間過降圧型の予後についてはまだ結論が出ていません。

表1 成人における血圧の分類

分 類収縮期血圧
(mmHg)
 拡張期血圧
(mmHg)
至適血圧120未満かつ80未満
正常血圧130未満かつ85未満
正常高価血圧130〜139または85〜89
軽症高血圧140〜159または90〜99
中等症高血圧160〜179または100〜109
重症高血圧180以上または110以上
収縮期高血圧140以上かつ90未満

表2 高血圧患者のリスクの層別化

血圧以外のリスク要因血圧分類
軽症高血圧
(140〜159/90〜99mmHg)
中等症高血圧
(160〜179/100〜109mmHg)
重症高血圧
(180mmHg以上/110mmHg以上)
危険因子なし低リスク中等リスク高リスク
糖尿病以外の危険因子あり中等リスク中等リスク高リスク
糖尿病、臓器障害、心血管病のいずれかがある高リスク高リスク高リスク

●詳しくは、日本高血圧学会のホームページへ→トップページ記事掲載ページ

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