一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

厚生労働省が「過労死等防止対策白書」を初めて作成

キーワード: 「多休」休養をしっかりとる 厚生労働省の調査

 厚生労働省はこのほど、平成28年版「過労死等防止対策白書」を公表した。同白書が作成されるのは初めてのことで、「過労死等が多い」と指摘されている業種の残業時間や、疲労の蓄積度、ストレスの状況などを重点的に調査している。

 2014年に成立した「過労死等防止対策推進法」では過労死を取り巻く現状や対策について年次報告をまとめることを義務付けている。白書ではまず、就業時間や年次有給休暇取得率、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合など、労働者を取り巻く現状について掲載。続いて、「労働・社会面からみた過労死等の状況」として、さまざまな角度から調査を行っている。

運輸業や情報通信業で残業時間が多い傾向にある
 例えば平均的な月における正規雇用従業員(フルタイム)1人当たりの月間時間外労働時間(業種別)を調べたところ、「月45時間超」と回答した企業の割合が最も多いのは「運輸業、郵便業」(14.0%)で際立って高い結果となった。「月20時間超」と回答した企業の割合も「運輸業、郵便業」(54.7%)が最も多く、「情報通信業」(53.7%)、「建設業」(48.7%)が続いた。

 一方で、1年間のうち1か月の時間外労働時間が最も長かった正規雇用従業員(フルタイム)の月間時間外労働時間を見ると、「月80時間超え」と回答した企業の割合は全体で22.7%。業種別では「情報通信業」(44.4%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(40.5%)、「運輸業、郵便業」(38.4%)と、いずれも全体の平均を大きく上回っている。

 報告書では所定外労働(残業)が発生する理由についても言及。残業時間の長い「建設業」、「情報通信業」、「運輸業、郵便業」、「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」、「教育、学習支援業」では、「人員が足りないため(仕事量が多いため)」の回答が最も多かった。一方で「学術研究、専門・技術サービス業」では「予定外の仕事が突発的に発生するため」が一番多い回答だったが、「情報通信業」や「卸売業、小売業」、「教育、学習支援業」でも二番目に多い回答だった。

 労働者に労働時間に関する希望を聞いたところ、残業時間が増えるにしたがって「今より減らしたい」との回答が増加することも判明。残業時間が1週間あたり「10時間以上20時間未満」では64.4%、「20時間以上」では76.8%もの人が「今より減らしたい」と答えていた。

残業時間の増加に伴って高くなる疲労とストレス
 最近1か月間の勤務状況や自覚症状から判定した疲労の蓄積度が「高い」または「非常に高い」となった労働者(正社員)の割合を見ると、業種別では「宿泊業、飲食サービス業」が40.3%と最も高く、次いで「教育、学習支援業」38.9%、「運輸業、郵便業」38.0%の順になっている。

 一方、最近数週間のストレスの状況に関する別の調査では、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」で、高いストレスがかかっていることが分かった。

 疲労の蓄積度やストレスの状況を平均的な1週間の残業時間別に見ると、残業時間が増えるに従ってその割合は高くなっている。また職場におけるハラスメントについては、「ハラスメントはない」との回答が約7割を占めたが、自分もしくは自分以外にハラスメントがある場合は約半数の労働者で疲労の蓄積度が高い結果も出ている。また疲労の蓄積度、ストレスの状況のいずれも、睡眠時間が短いほど高い割合を示した。

 このような状況から、過去半年間に過労や過剰ストレスによる脳血管疾患や心疾患、精神障害などの発症や悪化の不安を感じたことがあるかを尋ねた質問では、「精神障害(メンタルヘルス不調)の発症・悪化の不安を感じたことがある」が15.3%、「心疾患の発症・悪化の不安を感じたことがある」が6.3%、「脳血管疾患の発症・悪化の不安を感じたことがある」が5.3%だった。

若者への啓発機会も増やしていく
 白書では、第2章と第3章で「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の策定の経緯と概要などを説明。将来的に過労死等ゼロを目指すことや、平成29年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にすること、また平成32年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にする・年次有給休暇取得率を70%以上にすることなどを目標とし、早期達成を目指すことなどが示された。

 厚生労働省は過労死等の防止のための対策として、ポスターやパンフレットなどで国民に対して広く周知・啓発をはかっていく方針。一方で大学生や高校生などの若者を対象に、賃金や労働時間、休憩・休日に関するルールなど、働くときに知っておくべき労働基準関係法令に関する知識を分かりやすく解説する機会も設けていく。また「労働条件相談ほっとライン」や、メンタルヘルス不調・過重労働による健康障害に関する電話相談窓口「こころほっとライン」など相談窓口も設置するなどして、相談体制の整備も進める。

平成28年版過労死等防止対策白書

[yoshioka]

関連トピック

テーマ ▶ 厚生労働省の調査

2023年01月05日
最新の患者調査(厚生労働省)より、国民の健康状態について分析
2021年09月06日
「健康日本21(第二次)」の期間を2023年度までに1年延長。ただし、達成目標は変更せず
2018年09月18日
2017年国民健康・栄養調査(2) 食事エネルギー量は60歳代が最多 外出しない高齢男性が低栄養に
2018年09月18日
2017年国民健康・栄養調査(1) 糖尿病・高血圧・コレステロール 多くの項目で目標未達成
2018年08月24日
厚労省 長時間労働が疑われる事業場の監督指導結果を公表

一無・二少・三多 ▶ 「多休」休養をしっかりとる

2022年08月22日
睡眠を改善するスマホアプリを開発 スマホで「不眠症の認知行動療法」 京都大・沖電気など
2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
歩く人にやさしい町づくりで認知症リスクを半分に減らす 歩きたくなる町をデザイン クルマ中心からヒト中心の空間に
2021年03月29日
【新型コロナ】東日本大震災から10年 コロナ禍により被災地で心の状態が悪くなった人が増加 「ソーシャル・キャピタル」の減少が原因?
2021年03月29日
【新型コロナ】「未来の自分」に手紙を書くことでネガティブ感情を軽減 明るい未来を想像することがセルフケアに
市民公開講演会参加者募集中!
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート