2015年02月16日
「健康寿命」を延ばすと2〜5兆円の節減効果 介護予防事業の普及が条件
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健康状態に問題がなく日常生活が制限されることなく暮らせる期間を示す「健康寿命」を延ばすと、10年間に2〜5兆円程度の医療・介護費用が節減できるという推計を、厚生労働省研究班(主任研究者=辻一郎・東北大学大学院公衆衛生学分野教授)がまとめた。
10%が「要介護1」に変わると2兆4,914億円の低減効果
「要介護2」以上の人は、自力では立ち上がりや歩行などが困難になり、食事や排泄、入浴、衣服の着脱などで介助が必要になる。厚生労働省の「介護給付費実態調査」によると、1年間継続して介護予防サービスや介護サービスを受給した人の数は349万。うち、要介護2以上は217万人となっている。
研究班は、宮城県大崎市の65歳以上住民約1.5万人を追跡して、要介護発生リスクとの関連を調査した。要介護2以上の人の合計が2011年時点から20年まで、1年に1%ずつ、10年で計10%減った場合の介護費の節減額を算出した。
厚労省の調査から推計した結果、この10%全て介護が不要な状態になると、10年間で5兆2,914億円を節減できることが分かった。10%が「要介護1」に変化すると、2兆4,914億円を低減できるという。1年間に換算すると、それぞれ5,291億円と2,491億円になる。
研究班によると、介護予防事業特定高齢者施策の利用が高いと、要介護1以上の増加を減らせることが明らかになっている。介護予防事業が軽度要介護認定率の増加を抑えている。
一方、厚労省は特定高齢者施策の利用者数が高齢人口の5%となることを目安として「地域支援事業実施要綱」に提示しているが、利用率が5%以上であった施設は全体の0.4%だった。介護予防事業が十分に普及していない現状がある。
生活機能や心身機能が改善する人の特徴をつかめれば、介護予防効果の期待できる対象者を絞り込むことができ、介護予防システムの効果が高まる。「要支援・要介護ハイリスク者を拾い上げる予測精度の高いスクリーニング・ツールを開発して、市町村が地域の特性に応じて効果的な介護予防の取組みを実施できるように対策することが必要」と、研究班は述べている。
東北大学大学院医学系研究科 社会医学講座公衆衛生学分野「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取組の推進(厚生労働省)
厚生労働科学研究 健康寿命のページ(厚生労働省)
(TERA)