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HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される

キーワード: 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 動脈硬化

 HDL-Cは血管内皮機能(FMD)と正の相関を示し、内皮保護作用が認められるが、糖尿病患者に限ってはその相関がみられず、HDL-Cの内皮保護作用がキャンセルされている可能性が、徳島大学卒後臨床研修センターの田岡志保氏により報告された。第34回日本高血圧学会総会(10月20〜22日・宇都宮)における発表。
血管内皮機能の改善に有効な介入法を探る研究
 動脈硬化の最初期の病変である血管内皮機能(FMD.Flow Mediated Dilation)の低下は可逆的変化であることから、早期発見と早期介入により動脈硬化進展抑制につながる。しかし、どのような介入法が内皮機能改善に最も有効なのかは明らかになっていない。田岡氏らの研究は、動脈硬化のリスク保有者を対象に、血管内皮機能に影響を与える因子の評価を試みたもの。発表のタイトルは『心血管リスク因子を有する成人の血管内皮機能制御因子に関する臨床的検討』。

 研究対象は、徳島大学病院内分泌代謝内科にて診療または検診を受けた者175名(男性81名、女性94名、年齢63.3±10.2歳)。うち糖尿病患者は66名(男性33名、女性33名)。全体の平均HbA1cは6.0±1.2%。

HDL-Cは%FMDの独立した正の相関因子
 血管内皮機能は、右上腕を5分間駆血し開放後120秒までの最大血管径を駆血前値と比較した値「%FMD」を指標とした。この%FMDとの相関因子として、年齢やHbA1cのほか、BMI、血圧、脈圧、既往症(糖尿病、高血圧、脂質異常症)、血清脂質値、血清クレアチニン値、尿中アルブミンを評価項目として規定した単変量解析において、%FMDと相関していたのは、年齢、脈圧、HDL-C、血清クレアチニン値、高血圧の既往だった。

 これらを説明変数としたステップワイズ法による多変量解析では、年齢と脈圧が%FMDと負の相関(いずれもp<0.05)、HDL-Cと%FMDが正の相関(p<0.01)となった。これは、HDL-Cが%FMDの独立した強力な正の相関因子であり、血管内皮機能保護的に作用していることを示唆している。

糖尿病症例ではHDL-Cの血管内皮保護作用がキャンセルされる
 
 次に、糖尿病の有無別に行った多変量解析では、非糖尿病の場合、年齢と高血圧の既往が%FMDと負の相関(いずれもp<0.05)、HDL-Cが正の相関(p<0.01)と、全数解析とほぼ同様の結果だった。その一方で、糖尿病症例の場合は、血清クレアチニン値のみが負の相関因子(p<0.05)であり、HDL-Cとの正の相関は消失した(右図)。

 糖尿病ではインスリン作用の低下による高TG血症とともに低HDL-C血症を伴うことが多いが、そのような糖尿病の病態はHDL-Cの血管内皮保護作用を相殺してしまう可能性を示したものと言える。


 田岡氏は、以上より、「血管障害進展抑制にはHDL-C増加を目指した生活療法や脂質への介入が重要であり、HDL-Cによる血管内皮機能の保持には糖尿病病態の改善が必要」とまとめた。


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[mhlab]

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