一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する

キーワード: 糖尿病 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症 脳梗塞/脳出血

 血管内皮障害は動脈硬化の最初期の変化されているが、その血管内皮機能が血糖変動に伴って変化し続けており、両者には負の相関があることが、第55回日本糖尿病学会年次学術集会(5月17〜19日、横浜)で報告された。福井県済生会病院検査部の岩佐一郎技師の発表。
食後FMDは食前に比べ有意に低下
 岩佐氏らはまず、基礎疾患のない成人男性10名(平均年齢43.9歳)を対象とし、食事による血管内皮機能の変化を検討。血管内皮機能はFMD(Flow Mediated Dilation.血流依存性血管拡張反応)検査で評価した。

 朝食後は絶飲食とし、昼食前に採血およびFMDを測定。続いて約900kcalの昼食を摂取させ35分後に再度、採血とFMD測定を行った。その結果、食後の血糖値は食前に比し平均54mg/dL有意に上昇していた。

 FMDは10名中1名のみ上昇していたが、他の9名は低下しており、変動幅の平均は−2.6%で、この変化は有意であった。なお、血圧や心拍数に有意な変化はなかった。

75gOGTTの30分毎測定でFMDは鋭敏に変化。血糖とは負の相関
 続いて75gOGTTによるFMDの変化を検査技師3名を被検者として検討。朝食後絶飲食ののち糖負荷後は30分ごとに採血とFMD測定を行った。

 結果は3名いずれも、糖負荷後の血糖上昇ピーク時にFMDが最も低値となり、血糖が負荷前値に近付くに従ってFMDが回復するという、一致した変動パターンが確認された。この3名の血糖とFMDの値をプロットすると、両者に有意な負の相関がみられた(R2 =0.4131,p<0.01)。


50代男性の血糖とFMDの変化
血糖の変化に追随しFMDが鋭敏に変化しており、両者は相反する。
他の2名の検討(20代女性と30代女性)でも同様の結果が得られた
血糖変化に連動しFMDはダイナミツクに変動。頻回測定で新たな治療指標となる可能性も
 これらの結果のまとめとして岩佐氏は、「高血糖が一時的にせよ血管内皮機能を低下させる要因の一つであると考えられ、持続的な高血糖下では内皮機能低下状態が続くことになり、内皮障害が不可逆化し永続的な動脈硬化の進展につながると推測される」と考察した。また、「FMDは被検者の測定時の状態により変化するため、従来は正確な測定が繁雑という負のイメージをもっていたが、このことは逆に言えば、FMDがその時点の患者さんの状態を感度よく表していると考えるようになった」と述べた。


 健常者においてはFMDが血糖に連動しダイナミックに変化していることが示され、今後FMDは動脈硬化の早期発見のみでなく、頻回測定することにより治療評価指標の一つとして用い得るかもしれない。


関連情報:
大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
平成24年度診療報酬改定について(厚生労働省)
ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
血管内皮機能、FMD検査のユネクス
一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」

[mhlab]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2022年11月18日
重要性を増す街中の「ゆびさきセルフ(検体)測定室」の役割! ~検体測定室連絡協議会「世界糖尿病デー・健康啓発セミナー2022」~
2022年10月07日
10月8日は、糖をはかる日です。
血糖のことを知り、はかって、血管を守ろう!
2022年09月22日
日本の女性のやせ過ぎ問題とその栄養対策 Part 1 若い女性のやせ過ぎ問題は待ったなし!
2022年09月20日
糖尿病予備群の段階から「サルコペニア」のリスクは上昇 早期からの生活スタイル改善が重要
2022年08月22日
「1日3食+間食」の食品摂取量を評価できる簡易ツールを開発 食事指導や栄養教育の土台に

疾患 ▶ 脳梗塞/脳出血

2022年10月07日
10月8日は、糖をはかる日です。
血糖のことを知り、はかって、血管を守ろう!
2022年07月13日
熱中症? いや、脳梗塞かもしれない! Part 2
脳梗塞予防の決め手は血管力のアップと牛乳パワー
2022年07月13日
熱中症? いや、脳梗塞かもしれない! Part 1
症状の見分け方と対策
2022年02月28日
食物繊維を多く食べるほど認知症リスクが低下 食物繊維と腸内細菌の良い関係
2021年12月20日
牛乳を毎日1杯飲むと脳卒中リスクが低下 認知症リスクも低下 牛乳に血圧を下げる効果が?

疾患 ▶ 心筋梗塞/狭心症

2022年10月07日
10月8日は、糖をはかる日です。
血糖のことを知り、はかって、血管を守ろう!
2022年07月12日
女性の「心臓発作」の症状は男性とどう違う? 女性でも胸痛・発汗・息切れが多い 「性差医療」が必要
2022年03月10日
「筋トレ」の実施時間が長いほど糖尿病リスクは低下 家庭や職場で簡単にできる筋トレ
2021年09月10日
コーヒーを1日に最大3杯飲むと脳卒中や心臓病のリスクが低下 糖尿病の人にもベネフィットが
2021年02月09日
くるみなど植物由来のオメガ3脂肪酸を豊富に含む食生活で心筋梗塞後の死亡リスクが低下

疾患 ▶ 動脈硬化

2022年10月07日
10月8日は、糖をはかる日です。
血糖のことを知り、はかって、血管を守ろう!
2022年07月12日
女性の「心臓発作」の症状は男性とどう違う? 女性でも胸痛・発汗・息切れが多い 「性差医療」が必要
2021年02月18日
ウォーキングなどの運動は「1日にわずか12分」でも効果がある 運動など生活スタイル改善の指導を容易に
2020年12月14日
肥満や糖尿病に「コーヒー・緑茶・アルコール」は良い・悪い? どれくらい飲むと健康効果を期待できる?
2020年11月26日
納豆などの「発酵性大豆食品」が循環器疾患や脳卒中のリスクを低下 日本人8万人を調査
市民公開講演会参加者募集中!
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート