2011年11月11日
運動が高齢者のうつ病を防ぐ やる気を引き出す指導が効果的
カテゴリー: 三多(多動・多休・多接) 運動 健診・保健指導
高齢者が運動を習慣的に行うと、抑うつ症状の危険性が低下する可能性があることが、欧州の高齢者を対象とした大規模研究であきらかになった。スウェーデンのゴセンバーグ大学の研究者らが発表した。研究者らは「運動に対する動機付けを自分で行うよう促すよう、高齢者を励ますことが行動変容につながる」と述べている。
運動習慣と抑うつが相互に影響
「高齢者の運動習慣と抑うつ症状の関連について、確かなことはまだ分かっていないが、運動や身体活動を活発に行う行動的な高齢者では抑うつ症状が低下することがあきらかだ。一方で、抑うつ感情が運動を続けることの妨げとなることも知られている。運動習慣と抑うつは相互に影響し合っている」とゴセンバーグ大学のMagnus Lindwall氏(心理医療)は言う。
研究チームは、EUが資金提供して行われている大規模研究「高齢者・退職者の健康と加齢に関する調査(SHARE)」に参加した、欧州11ヵ国の1万7500人の高齢者(平均年齢は64歳)を対象に、運動と抑うつの関連を調べた。追跡期間は平均2.5年に及んだ。
抑うつ症状と行動について評価する指標「EURO-Dスケール」を用い、調査開始時点と終了時点の抑うつ症状に関する評価を行った。運動・身体活動については、2時点における中程度の活発な運動量を基準にした。
その結果、調査開始時・終了時いずれも運動量が多い群は、抑うつ症状の割合や意欲の低下が低い傾向がみられた。また、抑うつ症状による行動意欲の変化が、身体活動量の潜在的な変化と関連していることが分かった。
高齢者の運動の動機付けを促すプログラムを開発
「これは、運動や身体活動が抑うつ症にどのように影響するか、そして抑うつ症の進展が運動習慣にどれだけ影響するかを調査した初めての前向き研究だ」とLindwall氏は述べている。
「高齢者が活発な運動を行うことを習慣化するために、どのような動機付けが必要となるかが大きな課題となっている。保健指導では、高齢者に運動や身体活動の必要さを社会的な関係性と結びつけて理解してもらい、生活習慣の改善を自己決定できるよう導くことが重要となる。高齢者が自ら長期にわたり運動を習慣として行うよう指導できれば、運動や身体活動とメンタルヘルスが相互に影響しあい、良好な結果を得られるだろう」としている。
「我々は、高齢者の運動の動機付けを促す構造化プログラムの開発を進めている。今回の研究はプログラムの正当性を支持するものだ」とLindwall氏は言う。
「ただし、運動の習慣化は健康増進において良好な効果が得られるのは確かだとしても、抑うつ症などが障害になることがある点に注意が必要だ。抑うつ症がある高齢者は、運動をしたがらず、動機付けも困難になる。抑うつ症を早期に発見し、適切な治療を行うことも必要となるだろう」としている。
The reciprocal relationship between physical activity and depression in older European adults: A prospective cross-lagged panel design using SHARE dataHealth Psychology, Vol 30(4), Jul 2011, 453-462
More years to life and life to years through increased motivation for an active life
(TERA)