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慢性腎臓病における心血管障害 〜L-FABPの可能性〜

キーワード: 糖尿病 CKD(慢性腎臓病) 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症

脳とCKD
GFR低下は無症候性ラクナ梗塞の独立した危険因子であり、
認知機能との関連も示唆される

 1990年代にMRI等の画像検査機器が普及してきたころ、我々はCKDにはラクナ梗塞が多く、頸動脈IMTが肥厚している患者も多いことに気づき始めた。そして2000年代に入り、GFRの低下に伴い無症候性ラクナ梗塞の頻度が増加すること、GFR低下は高血圧から独立した有意なリスク因子であることを報告した1)

 さらに最近、SPECTを用いた検討で、外来通院中の透析患者全例に脳血流の低下を認め、認知機能の軽度低下も来していることを明らかにした2)。この検討において脳血流の低下と関連する因子を解析したところ、有意な因子として、RAS(renin-angiotensin-aldosterone system、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)抑制薬の不使用、PCI(percutaneous coronary intervention、経皮的冠動脈形成術)の施行歴、拡張期血圧高値が挙げられた。これらはすべて血管性の問題であり、透析患者の認知機能低下に血管障害の関与が示唆される。そこで血管障害の進展因子について述べてみたい。

CKDとインスリン抵抗性・血管内皮機能

 血管障害の進展因子の一つとして、インスリン抵抗性が古くから研究されている。我々も腎臓内科医の立場からインスリン抵抗性の検討を重ねており、CKDでは糖尿病の有無に関わらず保存期の早期からインスリン抵抗性が出現し、透析に至るとほぼ全例がインスリン抵抗性状態であること、そしてそのような病態の関連因子として従来から報告されていた虚血や副甲状腺ホルモン機能亢進、ビタミンD低値などに加え、アシデミアや血清脂質の質的異常(ApoA1/B低値)が関与することを報告している3)

 また、インスリン抵抗性による血管障害の進展過程に血小板凝集能亢進や血管内皮機能低下が関与することは多くの報告があるが、我々は血中の白血球と血小板の凝集塊をカウントする手法により、透析患者ではその凝集塊が健常者の約2倍に増加していることを見出し、血行動態的異常も生じていることを明らかにしている4)

CKDと血管石灰化

 血管障害の進展において内皮機能の問題とは別に、中膜平滑筋の石灰化という問題がある。我々の検討では、GFRが45mL/分/1.73m2を切るあたりからAgatstonスコアが著明に上昇していた5)。さらに、内因性NO合成阻害物質であるADMA(asymmetric dimethylarginine、非対称型ジメチルアルギニン)がAgatstonスコアの上昇と相関していた。ただし多変量解析では、Agatstonスコアを規定する因子としてHOMA-IR(homeostasis model assessment estimated insulin resistance、インスリン抵抗性指数)のみが有意であったことから、やはり病態の上流にはインスリン抵抗性があると考えられる。

 ところで、血管石灰化は単にリンとカルシウムが結合して生じるというものではなく、平滑筋細胞が骨芽細胞に形質転換するなど多彩なプロセスを経る。中でも石灰化を抑制するmatrix Gla蛋白の重要性が指摘されていて、その産生をワルファリンが阻害することから、透析領域ではガイドラインでもその使用をなるべく控えることが推奨されており6)、循環器診療との関わりにおいてもこの点が強調される。

 では、血管石灰化を抑えるために今、我々ができることは何かと言えば、やはりリンの抑制である。しかし血中のリンはGFRが20mL/分/1.73m2を切る最終局面になってようやく上昇する。ところが血中リン濃度が3.5mg/dLと日常臨床でよくみられる程度のわずかな上昇であっても、全死亡の相対リスクは同2.5〜2.99mg/dLに比しHR 1.32と有意に上昇してくる7)。このことから、血中リンレベルをみていたのでは遅く、他のバイオマーカーが求められることがわかる。現在、その候補としてリン代謝を調整するFGF(fibroblast growth factor、線維芽細胞増殖因子)23等が挙がってきている。

心臓とCKD
透析導入時点で冠動脈疾患が高率にみられるが、
慢性炎症や血管石灰化がさらにそれを加速させる

さて、話題を冠動脈に転じたい。

 表1は、我々が発表してきた論文の中で最も多く引用されているものだ。透析患者では全く無症候であっても冠動脈造影による有意狭窄が高頻度に見つかったという結果である。特に糖尿病患者ではその頻度が高く、中には3枝病変の症例もあった。

表1 血液透析導入時点における無症候性冠動脈狭窄の頻度

心疾患に関して無症候の新規透析導入患者30例に、インフォームドコンセントを得たのち冠動脈造影を施行したところ、高頻度に有意狭窄がみつかった。

〔Ohtake T, Kobayashi S, et al. J Am Soc Nephrol 16:1141-1148,2005〕

 では、冠動脈の動脈硬化は透析導入時点で既に完成しているのかというと、決してそうではない。透析導入後にCRPやAgatstonスコアが高いほど冠動脈イベントが増えることから8)、慢性微小炎症や心臓弁の石灰化が関与してイベントリスクを上昇すると考えられる。僧房弁石灰化との関連する尿中バイオマーカーもあり9)、新たな治療戦略が我々に求められている。

次は...末梢動脈とCKD

(mhlab)

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